話し合い②
気まずい空気の中、シンが口を開いた。
『俺が配慮不足だった…ごめんなさい。』
『謝って欲しいわけではないし、責めてるわけでもない。ただ、シンが私だったらって想像してみて欲しい。あんな風にポツンと1人いる気持ちを。紹介もしてもらえないから挨拶もできなかった。』
『実は、いとこの嫁さんは天涯孤独で、出産した時うちが面倒見てたんよ。その時、うちの元嫁と仲良くしてたから、まだ連絡とってる可能性が高くて。だから、紹介した事でもし元嫁の耳に入ったら、って考えると紹介できなかった。』
『でも、事務員なんです、くらいは言えたんじゃないの?
私のこと紹介もされてないのにずけずけと会話になんて入っていけないし。』
『ても、ただの事務員なら、逆に紹介してなくない?…いや、してるのかな…どうなんだろう。』
『どうだろうね。してないかもだし、してるかもだし。』
言いながら私は泣いてしまっていた。
辛かった。まだ隠されてるみたいで。表には出てはいけない影の女みたいで。
結局は別れた後も嫁の陰がちらつく。
そうこうしてたら現場に着いたから、シンはお客さんのところに行ってしまった。
私は待機。
待機しながら色々考えた。
私はシンを責めたいわけでも、困らせたいわけでもなかった。
シンはとても困った声で、泣きそうな声で、私の言葉に耳を傾けて、時折シンの気持ちや思いを言葉を選びながら発していた。
そしてシンが戻ってきた。
現場の話を2.3したあと、私が言った。
『待ってる間考えてたの。もし私がほんとにただの事務員だったら、きっと、普通に、あれ?親戚の人ですかー?って話に入っていったりしてたと思うんよ。でも、私は自分はシンの彼女だっていうおごりがあった。だから、今回のことはシンのせいではないって思ったんだ。責めるような事言ってしまってごめんね。困らせたくないからさ…』
『いや、俺も、お客さんと話しながら色々と考えてたんよ。マナを紹介しなかった理由は完全に俺側の問題であって、それはマナにはなんの関係もない話だったな、って。配慮不足で本当にごめんなさい。』
シンが素直に謝ってくれたから、私も落ち着いて自分の悪かったところに気づけた。
ただ、、、
現実を思い知った感があった。
元嫁は今でこそここにはいないけれど、確かに20年近く曲がりなりにもシンの嫁としてここにいた。
その20年は、なかなか深いということに。
私とも7年いるけど、それは周りにはなんの関係もない、知らない話。
まだ結婚はしてないけど、後妻ってこんな感じなのかも、って思った。
深い覚悟が出来ないととてもじゃないけど辛すぎて無理だわ。
私にはまだまだ早いなと思った。
これからは少しはシンも私のことを考えてくれると思うし、私も考え方を変えて事務所にいられるかなと思う。
ぶつかっても、都度、こうやって話し合って気持ちを擦り合わせていけたらいいなと思った。
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